
リーダー挨拶
早稲田大学21世紀COEプログラム
「多元要素からなる自己組織系の物理」
拠点リーダー 石渡信一教授 生物や宇宙に見られるさまざまな自然現象や構造も、物質世界と同様、多種多様な要素(多元要素)からなる自己集合システムが織りなす一つの様相と捉えることができます。これまでの物理学は、単一あるいは数種類の要素からなるシステムを研究対象にしてきましたが、我々の21世紀COEプログラムでは、"多元要素からなる自己組織系"を取り上げます。その典型的な例は生物システムです。生物といえども、この地球環境という自然が作り出した"モノ"なのです。21世紀の物理学にとって魅力的な研究対象といえるでしょう。生物システムの仕組みや構造、そしてその成り立ちを物理学の眼で捉え、物理学として解明することには、宇宙や物質の物理学を開拓するのと同様、大きな夢があります。しかも共通の環境で出来上がったものである以上、生物と物質、物質と宇宙を支配する共通の原理があるはずです。単に個別の問題に注目するだけでなく、生物・物質・宇宙を相互に関連する"モノ"として捉えます。
早稲田大学は伝統的に実学志向ですが、基礎科学としての物理学に新しい局面を打ち出したいと考えます。応用を重視する早稲田の良いところを生かしつつ、基礎科学の発展に貢献できるグループ作りを目指します。特に若い優秀な人材を輩出したいのです。未開拓の分野に分け入ってそれを開拓するためには若い力が必要です。早稲田物理・応物はそのためのポテンシャルを持っています。
我々はこのプログラム実現のために、分野横断的なホリスティック(全体は部分の和ではなく一つの有機的なつながりと捉える)研究教育システムをつくります。「大学院生の覚醒プログラム」を工夫して大学院教育を充実するとともに、早稲田大学プロジェクト研究所の一つとして「自己組織系物理ホリスティック研究センター」を創設して新しい研究を展開します。これらのシステムを活用することで、大学院生・若手研究者を中心とし、教員、技術者、学生が渾然一体となった自由な研究の"場"を作り、生物・物性・宇宙物理を貫く新しい物理学の開拓を目指します。
幾つかの目標を掲げます。
(1)専門分野、研究室間の垣根をとりはずし、理論と実験との交流、理と工との融合を目指す、自由な気風の研究・教育の"場"をつくること。
(2)海外研究・教育機関との交換協定(研究者、大学院生の交流)、世界的な協力ネットワークの形成など、21世紀COEにふさわしい"システム"を構築すること。
(3)質・量ともに高いレベルの研究成果を生み出し、多くの"たくましい"人材を世に送り出すこと。
(4)"多元要素からなる自己組織系の物理"とは何かを世界に向けて発信し、物理学分野に新しい息吹を吹き込むこと。

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