さまざまな階層で現れる自己組織系について,宇宙、物性物理、生物物理の専門家
(COE講師)3名による集中講義が行われる。本講義は修士以上の大学院生を対象とし
ており、基礎から専門性の高い話題までを取り上げる。本集中講義によって、広い視野
を持って物理学を見ることを学ぶ。講師:須藤靖 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授
日時: 10月26日(木) 2,3,4限
27日(金) 2限
場所: 10月26日(木) 54号館B03号室
27日(金) 54号館101号室
講師:飯島澄男 名城大学教授 産総研ナノカーボン研究センター長 NEC特別主席研究員
日時: 11月7日(火) 3,4,5限
場所: 55S号館 第四会議室 (55S-2-02)
講義題目:(1) カーボンナノチューブの科学と応用
(2) 最新の電子顕微鏡を用いた物性研究 講師:豊島近 東京大学分子細胞生物研究所教授
日時: 12月 6日(水) 2,3,4限
場所: 62号館W棟1F大会議室
講義題目:「筋小胞体カルシウムポンプによるイオン輸送:構造的理解」
講義概要:「骨格筋の筋小胞体カルシウムATPase(SERCA1a)はP型イオン輸送ATPaseを代表するカルシウムポンプであり、994残基の単一ポリペプチド鎖からなる膜蛋白質である。3つの細胞質ドメイン(A,
actuator; N, nucleotide binding; P, phosphorylation),
と10本の膜貫通へリックス(M1-M10)からなる。筋小胞体にあっては、筋収縮時に筋細胞中に放出されたカルシウムを筋小胞体中に取り込み、弛緩をもたらす。そのためにATPの化学エネルギーを利用する。通常、そのメカニズムはE1/E2説で説明される。
E1状態では、カルシウム結合サイトは高親和性で細胞質を向いており、E2では低親和性で内腔側を向くというものである。反応の途中でこのATPaseは自己燐酸化され、E1P状態からE2P状態の二つの中間体の間で膜内に隔離されたイオンが内腔側に放出されると考えられている。我々はこのイオンポンプのX線結晶構造解析とその結果に基づく分子動力学計算に取り組んできた。現在、反応サイクル全体をカバーする7つの中間状態の構造を決定することができ、能動輸送の分子機構の概略は理解できたといってよい。また、ATPや燐酸化が何をしているのか、100%近いエネルギー変換効率は何故可能なのか、一見無駄にしか見えないプロトンの対抗輸送の役割は何なのか、といった本質的疑問にも答えられるようになってきた。この講義では、「膜蛋白質は何故膜蛋白質なのか」から始めて、イオン輸送のメカニズムに原子構造から迫ってみたい。」
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