より速いものの運動を測定するためには、より短いパルスが必要である。近年、アト秒のパルス幅を持つ光パルス[1]および電子パルス[2]の発生が確認された。これらは、~1014W/cm2の強レーザーパルスを気相原子または分子に照射することによって生じ、強レーザー電場下でのトンネルイオン化・電子再衝突という共通の物理過程をもとにしている。アト秒光または電子パルスを用いて、それぞれオージェイオン化過程[3]・重水素分子イオンの振動運動[4]が測定された。
アト秒科学の次の目標は、分子の中に電子波束を生成し、その運動を測定することだと言われている。本研究では、再衝突する電子のコヒーレントな性質を利用し、アト秒光パルス(高次高調波)のスペクトルに、もとの分子の電子軌道や束縛電子の運動が記述されることを実験的・理論的に示した[5-6]。再衝突過程はレーザーの一サイクル以内でおこるので、アト秒の精度でこれらのダイナミックスを測定することが可能であると考えられる。
[1]
Nature 414, 509 (2001)
[2]
Nature 417, 917 (2002)
[3]
Nature 419, 803 (2002)
[4]
Nature 421, 826 (2003)
[5]
Nature 432, 867 (2004)
[6]
PRL 94, 083003 (2005) |